心の深層にある「存在の痛み」と願いの本質

スピリチュアルという言葉に、どんな印象を持っていますか?
「なんだか怪しい」「現実的じゃない」「根拠がなさそう」
スピリチュアルという言葉を耳にしたとき、そうした印象を抱く方も少なくありません。
しかし、実はこの言葉は、私たち人間が生きる上で避けては通れない“存在の痛み”を指す、重要な概念でもあるのです。
特に、医療や緩和ケアの分野では、スピリチュアルな側面を丁寧に扱うことが、心の癒しや人生の質(QOL)の向上に欠かせない要素として認識されています。
この記事では、「スピリチュアルペイン=存在の痛み」という視点から、なぜ私たちが“願い”を持つのか、そしてその願いが叶うことが、どう心の深い部分に働きかけていくのかを紐解いていきます。
「トータルペイン」―苦しみは4つの層からできている
イギリスの緩和ケア医シシリー・ソンダースは、人の苦しみは単なる身体的痛みではなく、「身体・心理・社会・スピリチュアル」の4つの側面が複雑に絡み合ったものであると提唱しました。これを「トータルペイン」と呼びます。
その中でも、最も見落とされがちでありながら深い影響を与えるのが、「スピリチュアルペイン(存在の痛み)」です。
このスピリチュアルペインとは、たとえばー
- 「自分の存在にはもう価値がないのではないか」
- 「人生に意味を見いだせない」
- 「これまでの人生に後悔がある」
といった、目には見えない心の深いところで感じる痛みのこと。
この痛みは、医療の場だけでなく、日常のあらゆる場面で静かに顔を出します。
日常に潜む「スピリチュアルペイン」

- 私は誰からも愛されてないんだ
- 私は必要とされない存在なんだ
- 彼と上手くいかなくなったのは私のせい…
- あのときもっと私にできることがあったのに…
- 仕事で成果を出しても、どこか虚しい
- 誰かの期待に応えようと頑張っているのに、認められていない気がする…
こうした思いや違和感の奥にあるのも、実はスピリチュアルペインの一種だと考えることができます。
つまり、「今の自分ではダメなのではないか」「私には価値がないのではないか」といった、自身の存在そのものを問う痛みです。
この痛みを放置すると、いくら目の前の課題を解決しても、どこか満たされない感覚が残ってしまいます。
逆にいえば、この“存在の痛み”に丁寧に向き合うことができれば、本質的な癒しや納得感のある人生の選択へとつながるのです。
願いを叶えることは「存在の痛み」を癒すこと
「願いを叶える」
それは、単に夢を実現することではありません。
願いを持つこと、そしてその願いを叶えていく過程には、「私はここにいていい」「私には価値がある」と、自分の存在を改めて認めていくプロセスが含まれています。
たとえば、恋愛における願いであれば、「愛されたい」「大切にされたい」という思いの奥にあるのは、「私は愛される価値がある存在なのだ」と感じたいという願いです。
また、キャリアや夢の実現であれば、「社会に貢献したい」「自分らしい人生を生きたい」という願いが、「私はこの世界に必要とされている」という実感につながっていくのです。
願いを叶えることは、表面的な達成にとどまらず、心の深層にある“スピリチュアルな痛み”を癒していく、静かで力強い営みでもあります。
「怪しくないスピリチュアル」をもっと自由に語ろう
本来、「スピリチュアル」とは、宗教や神秘思想に限られた概念ではなく、「自分がどう生きたいか」「何を大切にしたいか」「人生に意味を感じる瞬間はどこにあるのか」といった、誰もが持つ根源的な問いと深く関係しています。
「スピリチュアル=怪しい」と感じてしまうのは、まだその言葉の背景にある真の意味が共有されていないからかもしれません。
今こそ、「心の痛み」「自分の存在を肯定すること」「人生に意味を見いだすこと」としてのスピリチュアルを、もっと日常的な言葉で語ってもいい時代ではないでしょうか。
心の奥にある願いに丁寧に耳を澄ませて
私たちは誰しも、目には見えないけれど確かに感じる「存在の痛み」を抱えながら生きています。
そして、その痛みの奥にこそ、本当の願いが隠れていることも少なくありません。
だからこそ、願いを持つこと、そしてそれを叶えていこうとすることは、自分自身を深く癒し、整え、再び立ち上がる力を育んでいくための道でもあるのです。
あなたが今、抱いている願いはなんですか?
その願いの奥に、どんな大切な思いがあるのか。
ぜひ、心静かに見つめてみてください。